2026.10
今年の夏、ブルガリアの山でハーブを摘んでいた私の頭上を、大きな鳥がゆっくりと横切りました。「あれは何だろう」と地元の人に尋ねて知ったのが、ハゲワシでした。それからずっと気になっていた鳥に会うため、今回はブルガリア南部のアルダ川が流れる東ロドピ山脈へと向かいました。
山脈の山あいにある小さな町、マジャロヴォ(Маджарово, Madzharovo)。この町のブルガリア鳥類保護協会(BSPB)が運営する「東ロドピ自然保護センター」は、ハゲワシ類の保護活動で知られる施設で、ハゲワシについて学べる展示や観察設備があります。
実物大のハゲワシの模型を前にすると、その大きさに驚かされます。ブルガリアで見られるハゲワシには、シロエリハゲワシ、クロハゲワシ、エジプトハゲワシなどがいます。シロエリハゲワシは、望遠鏡を使って実際に確認することができましたが、残りの2種類はまだ数が少なく、今回は姿を見ることができませんでした。
展示を見て興味深かったのは、ハゲワシの種類によって食料となる動物の食べる部位が異なることです。クチバシの形状や体格などがそれぞれ異なり、自分に適した部位を食べます。そのため、違う種類のハゲワシが同じ死骸に集まったとしても、餌がかぶらず競争を避けることができるのです。
また、ハゲワシはほとんど羽ばたかず、太陽で温められた上昇気流を利用して飛びます。保護センターからは、実際に旋回する様子や望遠鏡を使って、ヒナのいる巣も観察できました。
しかし残念なことに共産党時代には、捕食者を駆除するために使われた毒餌などによってハゲワシも大きく数を減らし、生態系の一部を担っていた役割も失われかけてしまいました。悲しいことに、現在でも多くの脅威にさらされています。
ハゲワシは死んだ動物を食べる「自然界の掃除屋」です。私たちから見ると少し不気味に感じる鳥ですが、死骸を素早く処理し、病原体が広がるのを抑える重要な役割を担っています。かつては人間によって数を減らされたハゲワシが、今では人間の保護活動によって少しずつその姿を取り戻しています。ブルガリアの空を悠々と舞う姿を、これからも見続けられることを願います。
東ロドピ山脈のバードウォッチングスポットマップ
保護センターの外観
ブルガリアに生息しているハゲワシのレプリカ
保護センターの職員の方がパネルを使って説明してくれた
アルダ川を眺めながらバードウォッチング
実際にハゲワシを観ることができた