2020 12Dec.

“不精”な方法でつくる国民的な食べ物、「リュテニッツァ」

「リュテニッツァ」とは、ブルガリアの伝統的な保存食の一種で、野菜で作られた赤いペースト状のものです。主な中身は赤いパプリカで、そのほかは、家庭や地域によって入れるものが違います。多くは、トマトや玉ねぎ、にんじんなどが入っており、塩・砂糖・油で味付けをします。

特に、パプリカの調理法にはいろいろな方法があるそうです。一番おいしいと言われているのは、パプリカをバーベキューのように炭火で焼き、一つひとつ皮をむくやり方です。秋になると、このリュテニッツァを作るために、外からパプリカを焼く良い匂いがしてきます。この工程は、焦げているところを丁寧に除くので、舌触りがとても滑らかになると共に、香ばしい匂いがつくのでとてもおいしく出来上がります。一方、調理にとても時間がかかるので、パプリカを焼かずに茹でて調理をしたり、下処理を一切しないという方法もあります。

今回、ブルガリア人の家庭で一緒に作らせてもらったリュテニッツァは、「マルゼリヴァ・リュテニッツァ」と呼ばれる方法で作りました。これは、手間がかからず簡単にできるので、「怠惰な、不精な」という意味の「マルゼリヴァ(мързелива, marzeliva)」と名付けられています。

調理方法は、野菜の食べられないところを取り、一口大にカットし、野菜と調味料を器に入れ、一気にオーブンで焼きます。その後、ブレンダーで混ぜて出来上がりです。

「リュテニッツァ」は、主食であるパンに塗るのがブルガリアの一般的な食べ方ですが、私はパスタやそばの実にかけて食べています。パプリカだけでなくトマトも入っているので、トマトペーストのようにいろいろアレンジして料理ができ、日本人の知り合いのお土産にすると好評です。しかし、ブルガリア人にはアレンジ料理は不評で、スタンダードな味が一番のようです。作るまでに時間がかかっていますし、そのままで十分おいしいので納得です。


  • 赤いパプリカ

  • 器に山盛りのカットされた野菜

  • オーブンでリュテニッツァの材料を焼いているところ

  • ブルガリアで使われている瓶の形。この形のものはフタを一回だけ使える。開けたら、次は新しいフタをつけて閉める。

  • スーパーで買ったリュテニッツァ。
    左は滑らかなペースト状、右は野菜の形が残っていて、焦げているところもところどころ見えている。

  • ある日の昼食。ニョッキのソースにリュテニッツァを使った時の写真。

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