最近の映画界では、制作費用の安い国で撮影されたものが多くなってきているそうですが、そうした国の一つにブルガリアを上げることができます。首都ソフィア市は2014年にユネスコの「創造都市ネットワーク※」に映画部門で登録されました。日本のCMや映画でも、実はブルガリアで撮影されていたものがあるんですよ。例えば古代ローマ人が日本の銭湯にタイムトリップする映画や、19世紀のニューヨークのような街角で起こるハプニングを黒猫ちゃんが窓から観察しているCM、そして同じ街角で雪の中ダンスするファストファッションの冬モデルのCMなんかもそうなんだそうです。
何と言っても人件費、物価が安いことがウリです。首都ソフィア市内にもかかわらずローマ時代や前世紀の都市の大きなセットを作りそのまま常設しておける地所を有するスタジオがあります。ヴィトシャ山の麓の閑静な地域ですが、すぐその下を高速道路が通っていて交通の便も良い場所です。
そしてもう一つ。ブルガリアは映画撮影にそのまま利用できるほどユニークな場所がたくさんあります。古い町並みもそうですが、他の国だったらもうとうの昔に取り壊されてしまったであろう、社会主義体制下でランドマークだったホール、工場や鉱山の廃墟、それに、以前は迎賓館で現在は博物館となっている重厚な建物が撮影に使われています。
ブルガリア中部にある「デヴェタシュカ洞窟」はもともと自然が作り出したコウモリたちの住処だったのですが、天然の要塞として旧体制下では空軍の燃料タンクが隠されていました。そんな場所で、当時敵国だったアメリカのハリウッド映画が派手なアクションシーンを撮影したことには、不思議なめぐり合わせを感じざるを得ません。
私は個人的には映画にあまり詳しくないのですが、映画好きな人は意外な映画の「聖地巡り」ができるかもしれませんね。
※創造都市ネットワーク(Creative Cities Network)
2004年にユネスコが採用したプロジェクトのひとつ。文学・映画・音楽・工芸・デザイン・メディアアート・食文化の創造産業7分野から、世界でも特色ある都市を認定するもの。「グローバル化の進展により固有文化の消失が危惧される中で、文化の多様性を保持するとともに、世界各地の文化産業が潜在的に有している可能性を、都市間の戦略的連携により最大限に発揮させるための枠組みが必要」との考えに基づいている。