ブルガリアでは昔から、「風邪をひいたらラキアを一杯飲んで寝なさい」、「腰が痛いならラキアを塗りなさい」などと言われ、そのような治療法が示すように、ブルガリア人の生活になくてはならないものが蒸留酒の「ラキア(ракия/rakiya)」です。果物を発酵・蒸留させて作る、アルコール度数が30~50度くらいになる強いお酒です。チェリーやプラム、アプリコット、ブドウなどさまざまな果物で作ることができます。
今回は友人宅で、洋なしのラキア作りに参加させてもらいました。畑の横に植えられた洋なしの実を枝ではたき落とし、それをナイフで適度な大きさにカットして容器に入れていきます。地面に落ちた洋なしを拾うのですが、洗いません。傷んでいても、そのまま容器に入れます。その後、水とパン酵母と砂糖を加え、糖度計で22~24%になるように調節します。そして、1日2~3回混ぜて、毎日発酵の様子を見ていきます。十分に発酵されたかは、日数ではわかりません。火をつけたろうそくを容器の上に移動し、もし火が消えたら、まだガスが出ているので発酵プロセスがまだ終わっていない証拠です。火が消えなくなったら、次の段階に移ることができます。発酵が終わると、糖が苦味成分に変わり、味が苦くなっているそうです。
次に、たき火を使うため畑まで移動し、装置を準備します。コーンスターチ・小麦・重曹・水を混ぜてペースト状のものを作り、液体を入れた装置を密閉します。隣のドラム缶に水を入れて準備は完成です。火をつけて沸騰させ、ラキアが蛇口から出てくるのを待ちます。
蛇口から最初に出てくるラキアは、アルコール度数が70度くらいあり、飲むに適しません。今回、私はそれを除菌スプレー用にもらいました。洋なしの香りがするお酒で、安心して使えます。その後、徐々にアルコール度数が落ちてくるので、時々アルコール度数計で測りながら、蒸留していきます。
これでラキアは完成ですが、その後、木のチップを入れて色を付けることもできます。コナラアルバという木のチップを入れると黄色に、桑の木のチップを入れると赤色に染まります。見た目がきれいになりますし、味がまろやかになります。飲み比べをしたところ、同じ50度のアルコール度数のはずなのに、木のチップを入れたものは喉がやける感じがなく飲みやすくなっていました。