冬の厳しいこの季節、ブルガリア各所は白い雪に包まれ、暖房の効いた室内にいる時間が長くなります。ああ、春が待ち遠しい・・・「クケリ」はそんな季節のイベントです。
「クケリ」は、旧暦の正月に、羊や山羊の毛皮を着て仮面をつけ、腰の周りにたくさんの大きなベルをぶら下げた男たちが町中を行列で練り歩き、この怖い姿と大きな音で悪霊を追い払おう、というもの。ブルガリアの先住民族と言われているトラキア人が、葡萄・ワインの神であるディオニソス神を祀って春を呼ぶ祭りをしていたのが由来だそうです。このお祭りはブルガリア国内のいろいろなところで行われていますが、東欧各国にもクケリに似た行事があるそうです。
クケリのお祭りとしては首都ソフィア市のお隣ペルニック市のフェスティバルが国際的に有名で、東欧だけでなくアフリカやアジアからも仮面をかぶって踊る様々な団体が参加し、たくさんの観光客が来て盛り上がります。
ペルニックのこのフェスティバルは「スルヴァ」といいます。この言葉は新年のあいさつで、「無病息災、悪霊退散」のために装飾したミズキの枝「スルヴァクニッツァ」で家族の背中を叩く新年の行事と関係があります。ベルニックのフェスティバルはこの新年の行事を原型として、クケリのお祭りが混ざったものなので、行列の中には、花嫁、警察官、聖職者、看護士などいろいろな仮装をした参加者たちもいます。伝統的にこのお祭りには男性が参加することになっているので行列の中に花嫁姿のいかつい男性がいることも。でも近年では大きなベルを付けた女性やホロ(ブルガリアのフォークダンス)を踊って行列に参加する女性も増加しています。子供たちにもこのフェスティバルは晴れの舞台。親たちは、大きな羽飾りのついた仮面をつけたり、もこもこの毛皮を着て行列に参加する我が子を写真に収めるのに忙しいようです。
オバケの格好で悪霊退散・・・そう考えるとブルガリアの人々にとって冬はまるで「悪いオバケに居座られている」ということなのでしょうか? 確かに体を冷やして体調を崩しやすくなるし、雪や凍結で道を歩くのが大変になるこの季節、とにかく「早く春が来ないかな~」という願いはどこも一緒なのですね。