日本からの観光客は、もしかしたらソフィアに来て「あれっ?ここは本当にヨーロッパなの?」と思うかもしれません。というのも、ブルガリアの首都ソフィア市の中心部に行くと、「ジャーミヤ」というイスラム教のモスク、そして半径500m以内に「シナゴグ」というユダヤ教の会堂、さらにいくつもの教会が目に入るのです。
かわいそうなくらい控えめに建っている「聖ペトカ教会」は屋根の高さが道路と同じ半地下構造。これはブルガリアがトルコの支配下にあった時、「キリスト教の教会を建ててもいいけどその前に建っているモスクより高くなってはダメ!」と言われたからだそうです。
実はソフィアで観光客のミーティングスポットとしても有名な「アレキサンダー・ネフスキー寺院」は露土戦争でのロシア人戦没者を弔う教会。近くにあるロシア正教の「聖ニコライ教会」と共に屋根が金ピカできらびやかなのに対し、すぐ近所にあるこの都市の名前の由来となった「聖ソフィア教会」や、目抜き通り「マリア・ルイーザ大通り」と「ヴィトシャ大通り」を分ける「聖ネデーリャ教会」は地味な日陰感がします。
市の中心部にはさらに「聖ヨセフカトリック教会」やルーマニア正教の教会があり、本当にいろいろな礼拝堂をほんの半日もあれば見て回ることができます。
日常接する地元のブルガリア人たちは信心深くなくてちょっと日本人に似ている感じもしますが、そんな国の首都の中心部にこんなにたくさんの礼拝堂があるのは、ブルガリアがヨーロッパの枠にありながらトルコやアラブから文化や宗教の影響を強く受けた、大国の権力のはざまに位置するバルカン地方だからなのでしょう。歴史を上書きするように地下墓地の上に建てられたり、テロで爆破されたり、一時期は倉庫に使われたり、以前はモスクだったものが今では博物館として使われていたり、周りをぐるりと大きな建物に囲まれてしまっていたり・・・この町の変遷を見つめてきた礼拝堂たちを気軽に回って歴史を感じてみてください。