首都・ソフィアから約30km南東に位置するペルニック(Перник, Pernik)は、首都の通勤圏として多くの人が住んでおり、国内で都市の人口10位(2024年現在)の街です。昔は炭鉱の街として栄えていました。街の中心には、立派な炭鉱のシンボルとしての建物もあります。
1891年からの歴史を持つこの鉱山は、鉱床(資源として利用できる鉱物や石油・天然ガスなどが集まっているところ)が枯渇して閉鎖される1966年まで稼働していたそうです。その約20年後に炭鉱博物館になりました。バルカン半島で唯一の炭鉱博物館です。
この施設は、地下の坑道の一部が全長約630mの展示室になっていることで知られています。初期のころの人力採掘から、木製の荷車や荷車による石炭の取り出し、馬車から電気機関車や機械化された石炭採掘施設に至るまで、100年以上にわたる石炭採掘の歴史が展示されています。これらの多くは実物で、ブルガリアの炭鉱の歴史を垣間見ることができます。
私は友人と一緒に約1時間弱のツアーに参加してみました。地下約50mの深さまで緩やかに下るのですが、温度は一年を通して0度ほどに保たれているため、夏でも防寒用の服が必要です。
ツアーではガイドさんがつき、当時の様子を詳しく説明してくれました。目に見えない有毒ガスから身を守るために、ランプや鳥などを使って危険を察知していたこと、馬は生まれてから3年間一度も外に出ることなく働かされ、2トンもある荷物を引いていたことなどを聞きました。また採掘中の坑内はとても暑く水分補給が必要で、炭鉱夫が一日に飲む水は6リットルもあったそうです。大変厳しい労働環境でしたが、給料が良かったために働きたい人が大勢集まり、街が形成されたとのことでした。
このツアーは土日関係なく毎時間実施されるため、混雑することはないだろうと思っていたのですが、予想は外れ、私が参加した回は10人ほどのグループになり少し驚きました。ブルガリア人にとってよく知られる人気の観光スポットになっているようで、市外からも多くの観光客が訪れていました。