2016 9Sep.

おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう

「はい、これ食べてね!おいしいわよ~」と、よくビン詰めのごちそうや甘いフルーツのコンポート、ジャムをもらいます。このようなプレゼントはほぼ決まって年配の女性からなのですが、間違いなくスーパーで買う既製品よりもおいしい!若い人も「バーバ(ブルガリア語でおばあちゃん)のつくるものは全部とってもおいしいんだ。 『マエストルスカ・ラボタ』なんだよ!」とよく言います。マエストルスカ・ラボタとは「職人技」のことです。

戦争、社会主義体制とその崩壊、という激動の時代を生き抜いてきた70代以上の世代にとって、いつも大事だったのは「家族皆がお腹を空かせたままにならないこと」でした。そのため自分の持ち家や田舎の庭に野菜を植え、それを収穫後、家の地下室に一冬分の保存食として備蓄することは、とても大事な仕事でした。

この保存食は、ジャムやトマトソースが一般的ですが、お皿にあけるともうそれだけでメインディッシュとなるものや、「チェルベン・ピペル(パプリカ粉)」、「オーリオ(サラダ油)」を仕上げにかけるとサラダになるものまで、バリエーション豊かで、飽きがきません。

縫い物、編み物もおばあちゃんたちの得意技です。モチーフを一つ一つ作り、それをつなげてクッションカバーやベッドカバーにします。その元になる毛糸はというと、着古したセーターをほどいたり、はたまた羊から採った本当の羊毛を紡ぐところからつくったり様々です。  首都ソフィア周辺ではずいぶん少なくなりましたが、ブルガリア全体ではまだまだこうした編み物が盛んな所もあります。

ブルガリアでは国連の定めた「国際高齢者デー」の10月1日に年金の無料相談窓口が開かれ、ホロ(民族舞踊)で相談に来たお年寄りを歓迎するそうです。EU加盟国中恐らく一番少ない年金でやりくりしながら、「子供や孫たちに何かしてあげなければ」とつつましくも誇りを失わないおじいちゃん、 おばあちゃんに、感謝を込めてこうした伝統の技についてじっくり聞いてみるのは、日本人の私にもとても楽しい一時です。


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