ブルガリア語で「ジムニナ(зимнина)」とは、「冬のために準備された製品」(通常は瓶詰や缶詰にされた)を意味する言葉で、主に夏にとれる野菜を加工して瓶詰めにしたものをそう呼びます。
以前に紹介したこともありますが、ブルガリア人は自分の畑を持っていることが多いため、そこで収穫したものを使ってジムニナにします。各家庭によって野菜や調味料の分量が微妙に違うので作り方は千差万別ですが、主に酢と塩で漬けるのが一般的です。
作ったジムニナは、家やアパートの地下にある「マゼ(мазе)」と呼ばれる保存庫で管理します。日本の物置的な役割ですが、レンガ造りの地下室は一年を通して温度が変わらないため、食べ物を保管するのに最適です。冬までに棚いっぱいに瓶詰めをたくさん作り、10月〜3月の冬の6カ月間で消費します。春・夏・秋には、生野菜があるのでそれを楽しみつつ、ジムニナを作ってまた冬に備えるというルーティーンを繰り返すのがブルガリア人の季節の暮らしです。
代表的なジムニナの一つは、「トルシア(туршия)」と呼ばれるもので、にんじんやカリフラワー、玉ねぎ、ニンニクなどが入っていることが多いです。昔は冬の間、生野菜が手に入らなかったので、このトルシアをサラダの代わりに食べていたそうです。今でも、ブルガリアの食卓にはなくてはならないもので、レストランのメニューにはない、ブルガリアの家庭料理です。スーパーでは一年を通して売られているので、観光客でも試すことができます。ピクルスの一種ですが、味が濃く、塩辛いので食べる際は気を付けてください。
ここでトマトのジムニナの作り方を紹介します。まず、適度な大きさに切ったトマトを瓶に入れ、塩を少し入れてフタをします。そして、トマトから自然に水が出てくるまで湯煎をします。調理と同時に中の空気が温められ、密閉されます。私はこの方法で、いつもトマトを2kgぐらい瓶詰めにします。ブルガリア人は一気に10㎏以上仕込んでおいて、その後、ミキサーにかけて煮詰めてトマトソースを作ったり、そのまま使ったりします。
また、季節の果物を砂糖で煮たコンポートも、冬のためによくキロ単位で作られます。材料の半分の分量の砂糖を入れて、水が出てくるのを待ち、煮込みます。ブルガリア人は、ここで水を入れて薄めてジュースのようにします。日本のジャムよりも水分が多いのが特徴で、ヨーグルトにかけていただくのにちょうどいいです。