日差しがだいぶ強くなってきたこの季節、友人が住んでいるブリジャーニ村に日帰り旅行をしてきました。この小さな村は、ブラゴエフグラッドから1時間ほどバスで南に下った山間部にあります。オスマン帝国時代からある歴史が長い村で、共産党時代には鉱山の街として栄えていました。現在はこの鉱山は閉まっており、だいぶ過疎化が進んでいます。小学校も閉校してしまったそうで、子どもたちは近隣の村まで通わなくてはなりません。
ブリジャーニ村に住むこの友人女性は、趣味としてブルガリアの伝統的な道具を集めています。民主主義の時代になり、さまざまな便利な道具が手に入るようになったため、ブルガリアでは古いものをゴミとして捨てる人が増えました。そんな中、彼女は知人を通じて処分するものを引き取ったり、格安で買い取ったりとコレクションをしています。木でできた農具や昔の洋服など、だいたい30年前〜100年前のものを所持しています。
この友人の自慢のコレクションを見せてもらいました。中でも一番興味深いと思ったのは、お土産屋で見たことがあるワインを入れる木製の容器で、昔の結婚式で使われていたものだそうです。ブルガリアでは、結婚式を日曜日に行う習わしがあるのですが、結婚式の2〜3日前になると、新郎新婦の親類縁者の中にいる10歳前後の女の子に頼み、ご近所にワインを配ります。これは、週末に行われる結婚式への招待状の意味を持つ伝統です。そのときのワインの容器が、この木製の入れ物。ブルガリアの伝統衣装を着た男性と女性の絵が描かれています。結婚式当日は、招待客にこの容器でウェルカムワインを振舞っていたそうです。
結婚式後のパーティー時には、今でもブルガリアのダンス、「ホロ」が披露されますが、昔は国花であるバラなどが描かれた伝統的な柄の大きな旗を、先頭の人が持って踊ったそうです。
これまで私はブルガリアの結婚式に何度も出席していますが、ご近所にワインを配ったり、旗を持って踊ったりする習慣を守っている式に出合ったことがありません。残念ながら、伝統的な習慣は薄れつつあることを実感しました。