都市圏では社会主義体制時代からの集合住宅が建ち並ぶブルガリア。最近では新しい建物も増えていますが、冬の厳しい土地柄、やはり暖房効率の良い集合住宅が好まれます。でも、建物の新旧にかかわりなく、日本人の私からすると、ちょっと不思議なものが必ずついています。それは「煙突」です。
中央給湯システムのない地方都市では薪ストーブ「ペチカ」は必須アイテム。首都ソフィアには中央給湯システムがあり、また最近ではエアコンも普及したのですが、それでもぬくぬくと火の燃えるペチカが欲しいとわざわざ設置したのでしょう、新しい建物の煙突からも煙が立ち上ります。こうした家では、建物の地下室や家の軒下に一冬分の薪を夏のうちに備蓄しておきます。
この「一冬分」というのが大変な量で、ご近所さんに手伝ってもらうか、人を雇うかしないと購入した薪を地下室にしまうことができません。そして薪は、しまう前にペチカにくべられるサイズにチェーンソーや斧などである程度切っておかなければならないので、結構な重労働です。雪の降り始める前にそれを済ませ、そしてそれ以前にまとまった量の薪を買うために、これまた大きな金額を取り分けておかなければなりません。
ブルガリアでは石炭が採れる場所もあり、そこでは薪よりも石炭がストーブに利用されます。ススが木よりも出ますが、より高温で暖かさが持続するのでこちらを好む人もいます。
冬の暗い時間が長い時期、家の中にあたたかい火が燃えているのは、何とも心まで温かく感じます。ペチカのタイプによっては、オーブンやコンロが付いているもの、家中に暖房用の温水を循環させる機能のついているもの、さらには鍛冶屋さんのハンドメイドのものもあるんですよ。寒いのはイヤですが、冬にしか味わえない楽しみがあるんですね。