ギリシャ国境まであと30kmというところに、サンダンスキという町があります。ソフィアより南に位置しており、温暖で雪もほとんど降りません。温泉保養地として名高い町ですが、それだけでなくこの地方の歴史や文化の中心として重要な存在でもあります。
ここで1970年代に見つかった遺跡が最近発掘調査され、博物館としてこの春のオープンに向けて、まさに今整備がなされているところです。裁判所の隣の歴史博物館では、教会の床を飾っていたモザイクが修復され、通りからも見えるように展示されています。まだ復元作業が続いていたのですが、学芸員の人が案内して説明してくれました。1cm角の立方体の石を砂の上に並べて作られた美しいモザイク。その当時いたであろういろいろな種類の鳥や魚、ぶどうの木、そして幾何学模様。それぞれに意味があるそうです。
この建物の裏にはさらに大きな教会の遺跡があるのですが、現在展示の準備中で、保護のために屋根がかけられていました。床のモザイクやコリント式の柱も復元され、現代の私たちにも中の様子がわかるようによみがえりました。奥には書庫、浸礼用のプール、台所、そして足の下を巡っていた下水道も見ることができます。教会の壁は今のように石とレンガがむき出しではなく、漆喰が塗られた上に、天然の塗料で美しく塗られているのがわかるところも残っています。
これらのものがつくられたのは3~6世紀、ローマ帝国からビザンツ帝国にかけての時代。かつてここで暮らしていた人々が、美術や文化の粋を集めて町中を美しく飾ったのでしょう。案内をしてくれた学芸員によると、「サンダンスキはどこでも掘り返せば古代の遺跡が出てきます。この教会ももっと掘ればギリシャ時代やトラキア人の時代のものが出てくるし、町の中心の大通りも強化ガラス張りにして足元を見ることができるようにしたいくらいですよ!」 それができたら素晴らしいですね。こんなに歴史的に価値のある「宝」を持っているサンダンスキ。温泉や周囲の観光名所への中継基地としてだけではもったいない町です。